どこ吹く風

自分には全く関係・関心がないというように、知らん顔をすること。「何処吹く風と聞き流す」

感動体験

「感動したもの勝ちだ。それも出来るだけ心の柔らかいうちに。」

 何の事かといぶかしがられる方もいらっしゃるかもしれないので説明します。

 4月16日のNHKあさイチにゲスト出演した、ミュージカルや舞台で活躍する井上芳雄さん。子供時代に地元福岡で見た舞台に大変感動し、その感動が以後の人生を変えたとの事でした。そうなのです。子供時代、まだ心の柔らかい時期に受けた感動とは、その後の人生を左右するほどに鮮烈なものなのです。その意味で「感動したもの勝ち」なのです。もしかすると保護者の大きな役割とはこの「感動体験」をどれだけ子供に与えられるかなのかな?と思います。

 私事で恐縮ですが、私の生まれ育ったのは山間の小さな町で、お隣の市に映画館が1つあるだけの、とても舞台など見られる環境ではありませんでした。でも、舞台は見られなくとも、さすがに小さな本屋くらいはありました。その、町に1つの小さな本屋で初めて自分のお金で買った本が田中芳樹先生の『銀河英雄伝説』でした。方々にアンテナを張り巡らせていた兄が「これ面白いぞ」と紹介してくれたのです。当時、徳間ノベルズで一巻780円。本伝が10巻に外伝が4巻。まずは本伝からと思い、兄と半分ずつお金を出し合って買いました。今にしてみるとなんと良い買い物だったことか。13・4歳だった私にとってこれがまさに「感動体験」でした。それこそ貪るようにして読んだ記憶があります。世の中にこんなに面白いものが在るのか?と感動しまくりでした。その後田中先生の著作を手当たり次第に読みました。アルスラーン戦記、マヴァー年代記、風よ、万里をかけよ、タイタニア夏の魔術、そして創竜伝などなど。私が文章を書くことに面白みを見つけて今に至っているのはこの13・4歳の時の感動体験がもとになっています。別に文章で生活できているわけではありませんが、それで一向にかまわないのです。何か本当に好きなものが在るってことは一生の宝物になるからです。そしてそんなことを考えながら今日も学童で借りる本を選ぶのです。もしかしたらこの一冊がその子の人生を変えるかもしれないと思いながら・・・。

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「俺は宇宙を手に入れる。」ラインハルト

「長谷川漣の何処吹く風」もあわせてどうぞ。

長谷川 漣の何処吹く風 – 表現者の肖像 (gentosha-book.com)