どこ吹く風

自分には全く関係・関心がないというように、知らん顔をすること。「何処吹く風と聞き流す」

トゥルーマン・ショウ

「真実を語るために必要な嘘がある。それは嘘ではなく、物語と呼ばれます。」これはある少女が、学校の先生から「物語」について教わる場面です。その女の子はそれを聴いて「私は作家になろう」と決意します。村上春樹氏の好きな場面だそうです。(『ブルックリン横丁』エリア・カザン監督。1945年)

 

「真実を語るために必要な嘘がある、それは嘘ではなく、物語と呼ばれる。」

 

さて、ここにも一つ「嘘」をテーマとした映画があります。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが・・・

トゥルーマン・ショウ』(1998)(ジム・キャリー主演)です。あらすじとしては・・・

トゥルーマンは生まれた時から、リアリティショーの主人公として育ちました。彼の生活は24時間、全世界に向けて生放送されていますが、彼はそのことを知りません。家族も親友も、周りの人全てが役者で、巨大セットの中で生活するトゥルーマン。生まれ育った島から出て、広い世界を見に行きたい、と願っているものの、テレビプロデューサーのたくみな仕掛けで、彼の思うようにはいきません。ジム・キャリー演じる主人公トゥルーマンは、「おはよう!そして会えない時のために、こんにちはとこんばんは!」が口癖です。TVショーというだけあって彼の生活はコメディのようで、世界中で愛されていました。トゥルーマンの家族や友達、同僚全員がキャストなのですが、ところどころで彼らはカメラ目線になり、コマーシャルのように商品の宣伝をします。また、トゥルーマンが行く先には常に大勢のキャストがスタジオセット共に準備をしており大忙しです。そんな事など知らずトゥルーマンは生活していたのですが、あるときに偶然全てを知り、島の外に出ようと奮闘します。このへんもまだコメディ色が強いです。荒れ狂う海をなんとか超え、トゥルーマンは世界の端、つまりセットの出口にたどり着きます。視聴者も涙ながらに海を越えようとする彼を応援してきました。出口でトゥルーマンはいつものあのセリフ「おはよう!そして会えない時のために、こんにちはとこんばんは!」を言いお辞儀し、外の世界に出ていきました。トゥルーマンを応援していた視聴者たちは歓喜し、また涙を流し番組は終了しました。番組が終了し、砂嵐に変わります。そしてひたすら歓喜した視聴者たちは何事もなかったかのようにチャンネルを換え、次の番組を変えるのでした。ひとりの人生に涙を流し、消費するだけ消費した後は、また次に消費するコンテンツを探すという、皮肉です。そんな視聴者の愚かさが描かれていました。序盤のコメディ色から一変、最後は痛烈な風刺が効いている映画でした。≫(以上シネマライズより抜粋)

 与えられた温室の中で生きていれば何不自由ない生活が送れる、しかし、どんなに困難でも自分の足で歩いてこそ人生には意味があるのだという強烈なメッセージがこの映画には込められている。そして最後トゥルーマンのセリフが何とも言えずスカッとする。彼はこれまで自分を欺き続けてきた俳優(友人や家族)・視聴者やプロデューサーに「僕の人生は、見世物じゃない!」などと怒りをあらわにはしない。いつもの挨拶「会えないときのために、こんにちは、こんばんは、おやすみ。」と言って深々と一礼して巨大なセットの出口から悠然と出ていく。最後の最後、怒りでなくユーモアでもって別れを告げるジム・キャリー扮するトゥルーマンに私は魅せられた。

 実はこれと同じテーマが1990年代のサイバーパンク漫画である『銃夢』(木城ゆきと)でも描かれている。生きたままメリーゴーランドにつながれた本物の馬が、体を固定させる器具を引きちぎって数歩歩いて息絶えるという場面がある。生きた馬による回転木馬を作成したデスティ・ノヴァ教授は「愚かな、メリーゴーランドの上を回っていれば死なずにすんだものを。」とそれを見て憐れむ。それに対して彼に敵対する息子のケイオスは「この馬は最後の数歩を好きなように歩いて死んだのだ。」と反論する。印象的な場面だ。

 さて翻って、我々現代資本主義社会に属する我々は「自分自身の足で歩いているだろうか?」それとも、トゥルーマンの如く与えられた温室の中でぬくぬくと生きているのだろうか?私にはどちらがいいのかはわからない。ただ、誰にでも訪れる人生の終わりには「十分生きた」と納得して死んでいきたいと常々思うのです。

 この文章を読んでいただいた皆さん、実はあなた方一人一人が実在する現実のトゥルーマンなのかもしれませんよ!自分を取り巻く現実を今一度疑ってみてはいかがでしょうか?(笑)最後に私が気になるのは劇中のトゥルーマンと彼に扮したジム・キャリーの給料、出演料(ギャラ)はいくら位だったのかという事。下世話な話で申し訳ないのですが気になって仕方ないのです。(何々、えっそんなに!とほほ~(泣))

 まだご覧になられていない方は是非!一見の価値のある作品だと思います!

それでは、会えないときのために、こんにちは、こんばんは、おやすみ。

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